中学受験理科の学校別対策とは
中学受験理科の学校別対策とは、志望校の過去問や学校別プリントを通して、その学校でよく出る単元、問題の聞き方、時間配分、捨て問の判断などを確認していく学習です。
ただし、学校別対策は「過去問を何度も解くこと」ではありません。
その学校でよく出る問題の型を知り、取るべき問題を取れるようにし、深追いしすぎる問題を見極めるための学習です。
特に理科では、学校によって出題のクセがかなり違います。
・物理が重い学校
・化学計算が難しい学校
・天体や地学で差がつく学校
・実験考察や記述が多い学校
・問題数が多く、時間配分が厳しい学校
・平均点は高いが、独特の処理力が求められる学校
このような違いを見ずに、ただ過去問を解いて点数だけを見ていると、学校別対策としては少し弱くなります。
この記事でわかること
この記事では、中学受験理科専門講師・木ノ下翔が、学校別対策の始め方を保護者向けに整理します。
・学校別対策はいつから始めるべきか
・過去問から何を見ればよいか
・直近何年分を見ればよいか
・学校ごとの出題傾向の読み方
・捨て問や名物問題の扱い方
・塾の志望校別講座や学校別プリントの使い方
・noteと理科の伴走の活用方法
学校別対策に入る前に、まず全体像をつかんでおきましょう。
学校別対策はいつから始めるべきか
学校別対策を本格的に始める時期は、基本的には6年生の秋口以降です。
理科の場合、全単元の学習が一通り終わり、過去問演習に入る時期と重なります。
ただし、ここで注意したいのは、
・過去問として時間を測って解くこと
・学校別対策として、特定の単元や典型パターンを練習すること
は別物だということです。
過去問として制限時間を測って取り組むのは秋以降でよいですが、志望校でよく出る単元や典型パターンの対策そのものは、もう少し早く始めてもかまいません。
たとえば、灘中のように特徴的な出題が多い学校では、古い年度の問題や類題を、5年生の終わりから6年生前半にかけて教材として扱うこともあります。
ただし、それは「過去問演習」ではなく、「学校別対策のための問題演習」です。
この違いを分けて考えることが大切です。
学校別対策で最初に見るべきもの
理科の学校別対策で最初に見るべきものは、次のような点です。
・よく出る分野
・問題数
・試験時間
・問題文の長さ
・計算問題の重さ
・記述問題の量
・表やグラフの読み取りの多さ
・捨て問の入り方
・その学校らしい独特の聞き方
まずは、生物・物理・化学・地学の4分野に分けて、どの分野がどれくらい出ているかを見ます。
そのうえで、さらに細かく見ていきます。
物理であれば、力学、電気、光、音、運動。
化学であれば、水溶液、気体、燃焼、中和、溶解度。
地学であれば、天体、気象、地層、火山、地震。
生物であれば、植物、動物、人体、分類、実験考察。
このように細かく見ていくと、「この学校は電気が難しくなりやすい」「この学校は化学の表やグラフが重い」「この学校は天体で差がつきやすい」といった特徴が見えてきます。
傾向分析は直近5〜6年を中心に見る
出題傾向を見るだけなら、まずは直近5〜6年分を見れば十分です。
あまり古い年度までさかのぼりすぎると、作問者が変わっていたり、出題方針が変わっていたりすることがあります。
古い年度の問題が簡単だったからといって、今の入試も同じとは限りません。
もちろん、志望校で何度も出る名物問題や典型パターンを練習するために、古い年度の問題を使うことはあります。
しかし、今の出題傾向を見るという意味では、直近の問題を重視するべきです。
学校別対策でやってはいけないこと
学校別対策で一番やってはいけないのは、古い傾向に引っ張られすぎることです。
昔の問題だけを見て、
・この学校は簡単だ
・この学校はこの単元ばかり出る
・この学校は記述が少ない
と判断してしまうと、最近の入試とズレることがあります。
もう一つ危険なのは、その学校の捨て問ばかりに手を出すことです。
難関校の過去問には、受験生全員が解けなくてもよい問題が混ざっています。
よほど腕に自信がある子でなければ、そうした問題ばかりに時間をかけるのは得策ではありません。
学校別対策で大切なのは、「その学校で取るべき問題」を確実に取れるようにすることです。
学校別対策がうまくいく子
学校別対策がうまくいく子は、自分の現状と問題のレベル感をある程度わかっています。
・この問題は今の自分が取るべき問題なのか
・この問題は復習すれば取れるようになる問題なのか
・この問題は今は深追いしなくてよい問題なのか
この判断ができる子は、学校別対策がうまく進みます。
また、塾の志望校別講座や学校別特訓を受けている場合は、その講座のレベルと自分の実力が合っていることも重要です。
教材が難しすぎると、毎週の学習が「わからない問題を眺める時間」になってしまいます。
逆に、ちょうどよいレベルの問題を扱えていると、学校別対策はかなり効果的になります。
学校別対策がうまくいかない子
学校別対策がうまくいかない子は、問題のレベル感を判断できていないことが多いです。
特に多いのは、次のようなケースです。
・全部の問題を完璧にしようとする
・捨て問に時間をかけすぎる
・直近の過去問を何度も反復してしまう
・過去問の点数だけを見て一喜一憂する
・自分の苦手単元を把握しないまま進める
・塾の学校別教材が自分に合っているかを確認していない
直近の過去問は、何度も反復して完璧にするものではありません。
基本的には、1回解いて、1回しっかり直す。
そこで、出題傾向、時間配分、取るべき問題、捨てるべき問題を確認する。
これくらいの使い方が現実的です。
何度もやり込んでできるようになっても、それは「その問題を覚えた」だけになりやすいので注意が必要です。
学校ごとの出題傾向はどう読むか
学校別対策では、まず大きく4分野に分けて見ます。
・生物
・物理
・化学
・地学
そのうえで、各分野をさらに細かい単元に分けて見ます。
たとえば物理なら、てこ、ばね、滑車、浮力、電気、光、音、運動。
化学なら、水溶液、気体、燃焼、中和、溶解度。
地学なら、天体、気象、地層、火山、地震。
生物なら、植物、動物、人体、分類、実験考察。
大切なのは、ただ「よく出る単元」を見るだけではありません。
その単元が出たときに、どれくらい難しくなりやすいかを見ることです。
同じ電気でも、学校によっては標準的な回路問題で終わることもあれば、かなり複雑な条件整理を求められることもあります。
同じ天体でも、基本知識で解ける学校もあれば、図を回転させたり、南半球の設定を考えたりする学校もあります。
「何が出るか」だけでなく、「どのくらいの難度で出るか」まで見ることが、学校別対策では重要です。
学校別対策の具体例
学校別対策では、まず共通の見方を押さえたうえで、実際の志望校ごとに出題傾向を確認していくことが大切です。
たとえば灘中理科では、初見に見える実験設定や複雑な条件整理が出題されますが、その根底には力学・電気・化学計算・天体などの基本パターンがあります。
灘中理科の出題傾向や過去問の使い方については、以下の記事で詳しく解説しています。
最難関校の学校別対策で意識したいこと
灘・開成・筑波大学附属駒場のような最難関校では、独特の言い回しや初見に見える設定に注意が必要です。
一見すると見たことがない問題でも、図を書き、条件を整理すると、今まで学んだ典型パターンに落とし込めることがあります。
最難関校の理科では、次のような力が求められます。
・長い問題文を読み切る力
・図や表に条件を整理する力
・典型パターンに落とし込む力
・捨て問を見極める力
・平均点や合格に必要な得点感覚をつかむ力
灘・開成・筑駒は、意外と平均点が高い年度もあります。
難しい問題に目が行きがちですが、高い平均点を取るためには、どの問題を確実に取らなければならないのかを考える必要があります。
女子難関校で意識したいこと
女子難関校では、偏差値としての難度と、理科の問題そのものの難度が必ずしも一致しないことがあります。
特に関東の女子難関校では、天体や実験考察、細かい知識、時間配分で差がつくことがあります。
昔の問題だけを見ると簡単に感じることがあっても、最近の問題では難度が上がっている場合があります。
そのため、古い年度だけを見て安心するのではなく、直近の問題で実際の難度を確認しておくことが大切です。
思考力・記述系の学校で意識したいこと
麻布・栄光・渋幕・渋渋のように、思考力や記述が目立つ学校では、初見問題への対応力が重要になります。
ただし、思考力問題といっても、完全にゼロから考える問題ばかりではありません。
多くの場合、典型パターンや既習知識を組み合わせて解く問題です。
大切なのは、
・リード文から必要な情報を拾う
・見たことのある形に落とし込む
・図や表で条件を整理する
・書くべきキーワードを外さない
ということです。
「初見だから無理」と考えるのではなく、「これは何に似ているか」を探す練習が必要です。
関西難関校で意識したいこと
関西難関校は、学校ごとの特徴がかなりはっきり出やすいです。
たとえば、洛南高附属中では最後の力学が名物になっており、どこまで解き、どこで切るかの判断が重要になります。
東大寺学園中は年度によってばらつきがありますが、電気が難しくなる年度があります。
甲陽学院中は全体的に難度が高く、特に化学の表やグラフの読み取りで差がつきやすい印象があります。
西大和学園中は、文章量や全体の難度が高く、処理力が求められます。
このように、関西難関校では「学校名」だけでまとめず、それぞれの名物問題や出題のクセを見て対策することが大切です。
塾の学校別特訓や志望校別講座はどう使うべきか
学校別対策では、塾の学校別特訓や志望校別講座をどう使うかも重要です。
ここで注意したいのは、その教材が誰に向けて作られているかです。
関西の学校別講座などでは、その学校を受ける上位の子に向けて教材が作られていることがあります。
つまり、捨て問級の問題が多く並んでいる場合があります。
その場合、ギリギリ合格を目指す子にとっては、教材が重すぎることがあります。
学校別講座を受けているから安心、ではありません。
・その教材は自分のレベルに合っているか
・今やるべき問題が扱われているか
・取るべき問題と捨てる問題の区別ができているか
・どれくらい学校別対策に時間をかけるべきか
このあたりは、塾の先生や個別指導の先生と相談しながら進めるのがよいでしょう。
過去問を解いたあとに記録しておきたいこと
学校別対策では、過去問を解いたあとの記録も大切です。
点数だけでは不十分です。
次のようなことを見ておきましょう。
・どの大問に何分かかったか
・時間切れになった大問はどれか
・どの単元で失点したか
・計算ミスなのか、知識不足なのか、条件整理ミスなのか
・取るべき問題を落としていないか
・捨ててもよい問題に時間をかけすぎていないか
・記述の採点感覚はどうか
・塾の先生から見て、今の時期として十分なのか
特に記述の採点感覚や、その学校でどこまで取れていればよいかは、家庭だけでは判断しにくい部分です。
過去問は塾の先生に提出し、第三者の目で見てもらうことをおすすめします。
合格者平均に届かないときの考え方
過去問の点数が合格者平均に届かないと、不安になる保護者の方は多いです。
しかし、合格者平均はかなり高い基準です。
全科目で合格者平均を取ると、かなり上位で合格することになります。
学校によっては、全科目で合格者平均を取れば、上位合格に近い位置になることもあります。
そのため、理科だけを見て「合格者平均に届いていないからダメ」と考える必要はありません。
大切なのは、今の時期に、取るべき問題を取れているかどうかです。
また、得意科目が合格者平均に届いていればよい、という見方もあります。
過去問の点数は、単独で判断するのではなく、時期、科目バランス、志望校の配点、他教科の状況と合わせて見ていきましょう。
過去問で点数が取れているときに見るべきこと
過去問で点数が取れているときも、油断は禁物です。
特に古い過去問は、今より簡単だったり、塾の授業や模試で似た問題をすでに扱っていたりすることがあります。
点数が取れている場合は、次のことを確認しましょう。
・直近の年度でも取れているか
・時間配分に無理がないか
・偶然知っていた問題に助けられていないか
・冠模試や学校別模試でも同じように取れているか
・苦手単元が残っていないか
過去問の点数だけで安心するのではなく、塾の学校別模試や冠模試で現状を確認することも大切です。
保護者は学校別対策にどこまで関わるべきか
保護者がどこまで関わるべきかは、通っている塾によって変わります。
塾が学校別対策までしっかり見てくれる場合は、保護者は進捗確認を中心にすればよいでしょう。
一方で、塾が学校別対策にはあまり関わらない場合は、家庭側でも状況を把握する必要があります。
ただし、保護者がすべてを教える必要はありません。
学校別対策だけスポットで個別指導を使う、過去問の見方だけ専門家に確認してもらう、という方法もあります。
家庭で大切なのは、点数だけを見て不安になったり安心したりすることではなく、今の学習が志望校対策として意味のある方向に進んでいるかを確認することです。
noteと理科の伴走の使い分け
noteと理科の伴走の使い分け
中学受験理科研究室では、教材や単元の全体像、家庭学習の方針、つまずきやすいポイントを整理しています。
より細かい学習ポイントは、noteで確認できます。
noteでは、各No・大問ごとの学習ポイントや、保護者がお子様に声をかけるときのポイントを整理しています。
・note
一方、実際の解き方や図の描き方、条件整理の手順は、理科の伴走の解説動画で確認できます。
理科の伴走について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
実際に解説動画を使って復習を始めたい方は、体験・登録ページをご確認ください。
つまり、
・中学受験理科研究室:全体像をつかむ
・note:各No・大問ごとの学習ポイントを確認する
・理科の伴走:実際の解き方を動画で確認する
・体験・登録ページ:利用開始の案内を見る
という使い分けがおすすめです。
木ノ下翔からのアドバイス
学校別対策で一番大切なのは、その学校の名物問題や典型パターンをしっかり練習することです。
ただし、それ以外の問題まで何でもかんでも深追いする必要はありません。
入試問題には、全員が解けなくてもよい問題も混ざっています。
大切なのは、志望校で取るべき問題を取れるようにすることです。
そのためには、過去問の点数だけを見るのではなく、
・どの単元で失点しているのか
・どの問題に時間をかけすぎているのか
・どの問題は取れるようにすべきなのか
・どの問題は今は深追いしなくてよいのか
を見ていく必要があります。
学校別対策は、難しい問題をたくさん解くことではありません。
志望校の出題のクセを知り、自分の実力と照らし合わせながら、合格に必要な問題を取れるようにしていく学習です。


