理科の過去問は、点数を見るためだけのものではありません
中学受験の6年生になると、過去問演習が始まります。
算数や国語に比べると、理科の過去問は後回しになりやすい教科です。
しかし、理科の過去問には大切な役割があります。
それは、単に点数を見ることではありません。
その学校がどのような問題を出すのか。
どの分野がよく出るのか。
どのような聞き方をするのか。
時間配分はどうすべきか。
どの問題を取り、どの問題を捨てるべきか。
こうしたことを確認するために、理科の過去問を使います。
過去問は、解いて終わりにするものではありません。
学校ごとの癖を知り、自分の現状を確認し、入試本番までに何を直すべきかを見つけるための教材です。
この記事でわかること
・理科の過去問を始める時期
・第一志望・併願校・前受け校で何年分解くべきか
・過去問で点数だけを見てはいけない理由
・理科の過去問直しで見るべきポイント
・難しすぎる問題の扱い方
・過去問の点数に一喜一憂しない考え方
・保護者が過去問演習で気をつけたいこと
理科の過去問はいつから始めるべきか
理科の過去問を始める時期は、基本的には塾の指示に従うのが一番です。
塾ごとにカリキュラムや志望校対策の進め方が違うため、勝手に早く始めすぎる必要はありません。
ただ、理科に関しては、メインになるのは11月ごろ、冬前くらいと考えてよいと思います。
もちろん、学校や塾の方針、本人の仕上がり具合によって前後します。
しかし、理科は直前期まで伸びる教科でもあります。
夏からいきなり過去問をどんどん解くというより、まずは塾のカリキュラムや単元の復習を進め、秋以降に過去問で学校ごとの癖を確認していく流れが自然です。
過去問は何年分やるべきか
過去問を何年分やるべきかは、志望順位によって変わります。
第一志望校
第一志望校なら、5〜6年分を目安にします。
学校の出題傾向や時間配分、問題の癖をつかむためには、ある程度の年数が必要です。
ただし、古すぎる年度まで無理にさかのぼる必要はありません。
近年の出題傾向を中心に確認しましょう。
併願校
実際に進学する可能性がある併願校なら、2〜3年分を目安にします。
志望順位によって、どこまで時間をかけるかを調整します。
すべての併願校を第一志望と同じように深くやると、時間が足りなくなります。
前受け校
前受け校であれば、1〜2年分でよいことが多いです。
目的は、学校の形式に慣れることと、本番前に試験の流れを確認することです。
理科の過去問で一番やってはいけない使い方
理科の過去問で一番やってはいけないのは、点数だけを見ることです。
点数がよかった。
点数が悪かった。
それだけで終わってしまうと、過去問を解く意味が薄くなります。
また、解いて終わるのもよくありません。
反対に、全部完璧に直そうとするのも危険です。
入試問題には、かなり変な問題や、みんながほとんどできないような問題も混ざっています。
そういう問題まで全部できるようにしようとすると、時間がいくらあっても足りません。
過去問では、直すべき問題と、いったん捨ててよい問題を分けることが大切です。
木ノ下翔からのアドバイス
小5理科では、「知っている」だけでは解けない問題が増えてきます。
特に物理や化学では、条件整理の仕方、図の描き方、比の使い方といった“考えるための型”を身につけることが大切です。
ここで基礎的な考え方をしっかり身につけておけば、小6で入試問題に取り組むときに大きな差になります。
逆に、小5内容があいまいなまま進んでしまうと、あとで戻るのに大きな時間と労力がかかります。
小5は大変な学年ですが、その分ここでの頑張りが、受験理科の土台を強くしてくれます。
理科の過去問ができる子
理科の過去問ができる子は、普段から理科をしっかり勉強している子です。
それに加えて、テストの受け方が上手な子です。
理科の過去問では、知識量だけでなく、
・時間配分
・問題を読む順番
・取るべき問題の見極め
・捨てる問題の判断
・条件整理
・計算の処理
・記述や実験考察への対応
が必要になります。
普段の学習で身につけた知識や解法を、限られた時間の中で使えるかどうかが問われます。
理科の過去問をうまく使えない子
理科の過去問をうまく使えない子は、まだ習熟度が十分でないことが多いです。
また、自分ができる範囲とできない範囲を把握できていない場合もあります。
過去問では、すべての問題を同じように解こうとすると時間が足りません。
自分にとって取るべき問題はどれか。
時間をかけすぎてはいけない問題はどれか。
後回しにすべき問題はどれか。
これを判断できないと、時間配分が崩れます。
理科の過去問が苦手な子は、理科全般の習熟度だけでなく、テストの受け方にも課題があることが多いです。
理科の過去問で見るべきこと
理科の過去問で見るべきなのは、学校の傾向です。
特に、
・どの分野がよく出るか
・どのような聞き方をするか
・選択肢の作り方
・数字の癖
・四捨五入の指示
・複数解答の扱い
・記述量
・実験考察の長さ
・計算問題の出し方
などを確認します。
理科では、問題そのものだけでなく、問題以外のところにも学校の癖が出ます。
たとえば、四捨五入の指示がどこに書いてあるか。
「すべて選びなさい」と書いていないのに、複数解答があるか。
こうした細かい癖を知っておくことも、過去問演習の大切な目的です。
合格最低点や平均点は、理科では気にしすぎなくてよい
理科では、合格最低点や合格者平均点を気にしすぎなくてよいです。
理由は、配点がブラックボックスになっている学校が多いからです。
問題ごとの配点が正確にわからない場合、自己採点の点数はどうしても大まかなものになります。
もちろん、全体の目安として見ることはできます。
しかし、細かい点数に一喜一憂する必要はありません。
それよりも、どの問題を取るべきだったか、どこで落としたのかを確認する方が大切です。
過去問の点数が悪かったとき
過去問の点数が悪かったときは、まず「本番でなくてよかった」と考えましょう。
当日ではなく、今わかったのはむしろラッキーです。
大切なのは、点数に落ち込むことではありません。
・どの単元で間違えたのか
・暗記不足なのか
・計算パターン不足なのか
・条件整理ができなかったのか
・時間が足りなかったのか
・問題の読み取りで失敗したのか
を確認することです。
間違い方を見れば、次に直すべきことが見えてきます。
過去問の点数が良かったとき
過去問の点数が良かったときも、油断してはいけません。
理科の過去問は、塾の授業や冠模試、学校別特訓の中で、似たテーマに触れていることがあります。
つまり、完全な初見ではない場合があります。
また、古い年度の過去問は、今より簡単に感じることもあります。
点数が良いこと自体は悪いことではありません。
しかし、「もう大丈夫」と思いすぎないことが大切です。
本番で同じように時間配分できるか。
別年度でも安定するか。
最近の難易度でも対応できるか。
そこまで確認しましょう。
過去問直しで最優先に見ること
理科の過去問直しで最優先に見るべきなのは、みんなができるところをしっかり取れているかどうかです。
過去問は、自分だけで見るのではなく、他の受験生との比較も大切です。
ただし、その比較には時期も関係します。
10月に解いた過去問を、1月の完成した受験生と比べても意味がありません。
大切なのは、同じ時期の合格者がどのくらいできていたかという視点です。
10月に解いたなら、合格者が10月ごろに取れていた問題を、今の自分が取れているか。
そういう見方をする必要があります。
これは家庭だけでは判断しにくいので、塾の先生や指導者に見てもらうのがよいです。
すべての問題を解き直す必要はありません
過去問直しでは、すべての問題を解き直す必要はありません。
解き直す問題は選びましょう。
特に、
・みんなが取るべき問題
・基本知識で取れる問題
・典型パターンで取れる計算問題
・時間があれば取れた問題
・自分の志望校で頻出の問題
は優先して直します。
一方で、
・難しすぎる問題
・解説を読んでも今の段階では厳しい問題
・合否にあまり影響しなさそうな問題
・学校の中でもかなり特殊な問題
は、深追いしすぎない方がよいです。
難しすぎる問題は捨ててもよい
入試問題には、難しすぎる問題が混ざっています。
そういう問題は、無理に全部できるようにしなくてよいです。
もちろん、最難関校を目指す場合は、難問への対応力も必要です。
しかし、すべての難問に時間をかけるのは危険です。
本番でも、難しすぎる問題を見切る力は大切です。
「これは今は捨ててよい」
「これは後回しでよい」
「これは先生と一緒に確認する問題」
と判断することも、過去問演習の一部です。
解けなかった問題は、塾テキストに戻るべきか
解けなかった問題があったとき、塾テキストに戻るべきかどうかは、どれくらい太刀打ちできなかったかによります。
全く手が出なかった場合は、内容に戻るべきです。
ただし、どこに戻ればよいかわからないこともあります。
その場合は、塾の先生や指導者に聞くのがよいです。
戻るべき単元が小5内容なのか。
小6前半の復習なのか。
暗記なのか。
計算パターンなのか。
条件整理なのか。
ここを見誤ると、復習に時間がかかります。
過去問直しノートは基本的には不要です
理科の過去問直しノートは、基本的には不要だと思います。
もちろん、作ってはいけないわけではありません。
学校独特の問題や、何度も出る特徴的なパターンをまとめるなら、作ってもよいです。
しかし、すべての間違いをきれいにノート化しようとすると、時間がかかりすぎます。
過去問直しでは、ノートを作ることよりも、
・何を間違えたか
・なぜ間違えたか
・次に何を直すか
を確認することが大切です。
最難関校の過去問で意識したいこと
灘、開成、筑駒などの最難関校の過去問では、図を描くことが大切です。
一見すると見たことがない問題が出てきます。
しかし、図や条件整理をすることで、今まで見たことのある問題に落とし込めることがあります。
最難関校の理科では、
・条件整理
・作図
・表やグラフの読み取り
・計算処理
・初見設定への対応
・典型問題への落とし込み
が問われます。
完全に新しい問題だと思わず、今まで学んだどの考え方に近いかを探しましょう。
標準校・中堅校でもやることは同じです
標準校や中堅校の過去問でも、基本的にやることは同じです。
何が最難関で、何が標準かというより、結局は自分の中で太刀打ちできているかどうかが大切です。
自分にとって難しい問題であれば、同じように条件整理が必要です。
自分にとって取るべき問題なら、確実に取る必要があります。
学校のレベルに関係なく、
・取るべき問題を取る
・捨てる問題を見極める
・時間配分を崩さない
・間違えた原因を確認する
という基本は変わりません。
女子校・共学校で見方は変わるか
女子校・共学校だからといって、理科の過去問の見方が大きく変わるわけではありません。
ただし、関東の女子校などでは、最近理科が難しくなっている学校もあります。
古い年度の過去問を解いて「思ったより簡単だ」と感じても、油断してはいけません。
必ず最近の年度も確認し、今の難易度を見ておきましょう。
過去問は古いものだけで判断しないことが大切です。
第一志望以外の過去問
第一志望以外の過去問は、2〜3年分が目安です。
実際に進学する可能性がある学校なら、学校の形式や時間配分を確認しておく必要があります。
前受け校なら、1〜2年分でもよいことが多いです。
すべての学校に同じだけ時間をかけるのではなく、志望順位によって時間配分を変えましょう。
保護者が過去問でやりがちなNG
保護者が過去問でやりがちなNGは、点数を見て不安になったり安心したりすることです。
過去問の点数は、家庭だけで正確に評価するのが難しいです。
問題の難易度も、配点も、時期ごとの仕上がり具合も、家庭だけでは判断しにくいからです。
だからこそ、過去問は塾の先生や指導者に提出し、第三者の目で見てもらうことが大切です。
今の時期としてどうなのか。
合格者と比べて何が足りないのか。
直すべき問題はどれか。
深追いしなくてよい問題はどれか。
こうした評価を、家庭だけで抱え込まないようにしましょう。
過去問後の声かけ
過去問の点数が悪かったとき、子どもは落ち込んでいることが多いです。
そのときは、
「今の時期だから、まだ仕方ないよね」
「本番でなくてよかった」
「次に直すところがわかったね」
という声かけが中心でよいです。
一方で、古い過去問を解いて点数がよかった場合は、油断しすぎないように注意が必要です。
「点がよかったのはいいけれど、最近の年度でも同じように取れるか確認しよう」
くらいの冷静さが大切です。
過去問の点数に一喜一憂しない
過去問の点数に一喜一憂しすぎないでください。
配点が不明な学校も多いため、点数だけでは正確に判断できません。
大切なのは、点数そのものより、先生の評価を聞くことです。
今の時期としてどうなのか。
直すべき単元は何か。
本番までに何を優先すべきか。
時間配分に問題はないか。
捨て問判断はできているか。
過去問は、定点観測として使いましょう。
1回の点数で安心したり不安になったりするのではなく、継続して状態を確認していくことが大切です。
理科の過去問が苦手な子に伝えたいこと
理科の過去問が苦手な子は、理科全般が苦手な場合もあります。
また、テストの時間配分が苦手な場合もあります。
普段からテスト形式の問題を解くときには、これが何のジャンルの問題なのかを意識しましょう。
暗記問題なのか。
計算問題なのか。
記述問題なのか。
実験考察なのか。
条件整理の問題なのか。
そのうえで、時間配分を意識して解く癖をつけることが大切です。
過去問は、ただ解くものではありません。
自分がどの問題で時間を使い、どの問題で点を落とし、どの問題を取るべきだったかを確認するためのものです。
木ノ下翔からのアドバイス
理科の過去問では、点数だけを見ないでください。
点数がよかったから安心。
点数が悪かったから不安。
それだけでは、過去問をうまく使えていません。
大切なのは、今の時期としてどうなのかを確認することです。
10月に解いた過去問なら、合格した子が10月ごろにどのくらいできていたのか。
11月に解いた過去問なら、11月時点で何ができていればよいのか。
1月の完成形と比べるのではなく、今の時期の受験生として何が足りないかを見ることが大切です。
その判断は、家庭だけでは難しいことがあります。
だからこそ、過去問は塾の先生や指導者に見てもらいましょう。
第三者の目で、取るべき問題、捨ててよい問題、戻るべき単元を確認する。
これが過去問を本当に活かす使い方です。


