SAPIX理科の物理が苦手な子の勉強法
力学・電気・運動でつまずく原因と対策
SAPIX理科では、小5以降に力学・電気・熱・光・運動などの物理分野が本格的に登場します。
物理分野は、中学受験理科の中でも得点差がつきやすい分野です。
生物や地学のように知識を覚えるだけでは対応しにくく、問題文から条件を読み取り、図や表に整理し、適切な解法を選ぶ力が求められます。
そのため、「授業ではわかったのに家で解けない」「解説を読めばわかるけれど、テストでは手が止まる」「てこ・ばね・浮力・電流になると急に点が取れない」と悩むご家庭も少なくありません。
この記事では、中学受験理科専門講師・木ノ下翔が、SAPIX理科の物理が苦手な子に多い原因と、力学・電気・運動でつまずいたときの勉強法を解説します。
なお、ここで紹介する考え方はSAPIX以外の中学受験理科にも共通します。ただし、この記事ではSAPIXのデイリーサピックスやテストの流れに合わせて解説します。
この記事でわかること
・SAPIX理科で物理が苦手になりやすい理由
・てこ・ばね・浮力・電流でつまずく原因
・物理で必要な図の描き方と条件整理
・小5物理を定着させるための勉強法
・小6で物理が苦手な場合に戻るべきところ
・理科の伴走や個別指導の活用法
SAPIX理科で物理が苦手になりやすい理由
SAPIX理科で物理が苦手になる子は少なくありません。
理由は、物理分野が「聞いてわかる」と「自分で解ける」の差が大きい分野だからです。
授業中は先生が図を描き、条件を整理し、解き方の流れを示してくれます。
そのため、その場では理解できたように感じます。
しかし、家に帰って自分で解こうとすると、どこに図を描けばよいのか、どの条件を使えばよいのか、どの解法につなげればよいのかが分からなくなることがあります。
物理は、説明を聞いて理解するだけでは不十分です。
自分で図を描き、条件を整理し、解法を選ぶ練習をくり返すことで、少しずつ解けるようになります。
物理でつまずく原因1 図を描かずに解こうとする
物理が苦手な子に多いのが、図を描かずに頭の中だけで解こうとすることです。
力学、電気、運動、光などの問題では、問題文に書かれている条件をそのまま頭の中で処理しようとすると、途中で混乱しやすくなります。
特に、てこ、ばね、浮力、滑車、電流などでは、図を描かずに正確に考えるのはかなり難しいです。
物理では、図を描くことそのものが解法の一部です。
図を描くことで、力の向き、長さ、重さ、電流の流れ、条件の関係が見えるようになります。
テスト直しをするときも、答えだけを見るのではなく、
・どの図を描くべきだったのか
・どこに条件を書き込むべきだったのか
・図を見れば次の一手が見える状態になっていたか
を確認しましょう。
図を描く習慣がつくだけで、物理の見え方は大きく変わります。
物理でつまずく原因2 力の向きが見えていない
力学でつまずく子は、力の向きが見えていないことが多いです。
てこ、ばね、滑車、浮力などでは、「どこにどの向きの力がはたらいているのか」を整理することが非常に大切です。
例えば、てこでは支点からの距離と力の大きさを見ます。
ばねでは、ばねにかかる力と伸びの関係を見ます。
浮力では、物体にはたらく重力と浮力の関係を考えます。
ここで力の向きがあいまいなままだと、式を立てても意味が分からなくなります。
力学では、まず力の矢印を描くことを意識しましょう。
問題を読んだら、いきなり計算に入るのではなく、「どこにどの向きの力がはたらいているか」を図に書き込む。
この習慣がつくと、力学の問題はかなり整理しやすくなります。
物理でつまずく原因3 条件整理ができていない
物理の問題で手が止まる原因の多くは、条件整理不足です。
問題文には、長さ、重さ、時間、速さ、電流の大きさ、抵抗、ばねの伸びなど、さまざまな条件が書かれています。
これらを整理しないまま解き始めると、何を使えばよいのか分からなくなります。
SAPIX理科では、学年が上がるにつれて条件の量が増えます。
小5で典型パターンを学び、小6ではそれらが組み合わさった総合問題として出てくることもあります。
条件整理では、次のことを意識しましょう。
・問題で何を求めるのか
・使う条件はどれか
・図に書き込める条件はどれか
・表に整理した方がよい条件はどれか
・比例関係や比で考えられる部分はどこか
物理が苦手な子は、解き方を覚える前に、まず条件を見える形にする練習が必要です。
物理でつまずく原因4 公式暗記だけで解こうとしている
物理では、公式を覚えることも大切です。
しかし、公式を覚えただけでは解けるようになりません。
中学受験理科では、公式をそのまま当てはめるだけの問題よりも、条件を整理したうえで、どの考え方を使うか判断する問題が多く出ます。
例えば、てこでは「力×距離」が大切ですが、それを知っているだけでは不十分です。
どこを支点にするのか、どの力を比べるのか、距離をどこから測るのかを判断しなければなりません。
電流でも、オームの法則を知っているだけでは足りません。
回路のどこにどれだけの電流が流れるのか、抵抗の大きさと電流の関係をどう見るのかを理解する必要があります。
公式は、使いどころまで含めて身につけるものです。
「この問題ではなぜこの公式を使うのか」を説明できるようにしていきましょう。
物理でつまずく原因5 典型パターンの演習量が足りない
物理が苦手な子は、典型パターンの演習量が足りていないことも多いです。
物理は、考える科目であると同時に、よく出る解き方の型を身につける科目でもあります。
てこにはてこの型があります。
ばねにはばねの型があります。
浮力には浮力の型があります。
電流には電流の型があります。
これらの型を知らないまま毎回その場で考えようとすると、テストでは時間が足りなくなります。
SAPIXのデイリーサピックスでは、小5を中心に物理の典型パターンを何度も学びます。
この時期に、問題ごとの解き方をただ覚えるのではなく、「ほかの問題にも使える解き方」として身につけることが大切です。
よく似た問題をくり返し解き、条件整理から解法選択まで自分で再現できるようにしましょう。
単元別の対策
てこ
てこで大切なのは、支点、力点、作用点を正しく見ることです。
まず、どこを支点にして考えるのかを確認しましょう。
そのうえで、支点からの距離と力の大きさを整理します。
てこが苦手な子は、図の中でどこからどこまでの距離を使うのかがあいまいになりがちです。
テスト直しでは、式だけを見直すのではなく、図に支点、力、距離を書き込めていたかを確認しましょう。
てこは、力の大きさと距離の関係が見えるようになると、一気に解きやすくなります。
ばね
ばねでは、力と伸びの比例関係を正しく理解することが大切です。
ばねにかかる力が2倍になれば、伸びも2倍になります。
この基本があいまいなままだと、複数のばねを使う問題や、ばねと重りを組み合わせた問題でつまずきます。
ばねの問題では、
・自然長
・伸び
・全体の長さ
・かかっている力
を分けて考えましょう。
特に、「ばねの長さ」と「ばねの伸び」を混同しないことが大切です。
浮力
浮力は、苦手にする子が非常に多い単元です。
浮力では、物体にはたらく重力と、液体から受ける上向きの力を整理する必要があります。
まずは、物体が水に浮いているのか、沈んでいるのか、一部だけ水に入っているのかを確認しましょう。
そのうえで、浮力がどれだけはたらいているのかを考えます。
浮力の問題では、図を描かずに解こうとすると混乱しやすくなります。
物体の状態を図にし、重力と浮力の矢印を書き込む習慣をつけましょう。
滑車・輪軸
滑車や輪軸は、力の向きと大きさを整理する単元です。
滑車では、ひもにかかる力がどのように伝わるのかを見ます。
輪軸では、半径の違いと力の関係を見ます。
この単元では、図を正しく見ることがとても重要です。
ひもがどこにつながっているのか、どの部分に同じ力がはたらいているのかを確認しましょう。
滑車・輪軸は、てこと同じように力のつり合いを考える単元です。
てこがあいまいな場合は、先にてこの考え方を復習しておくと理解しやすくなります。
豆電球と電流
電流で大切なのは、回路の中で電流がどのように流れるかを追うことです。
豆電球、乾電池、抵抗、スイッチなどがどのようにつながっているのかを見て、直列なのか並列なのかを判断します。
電流が苦手な子は、回路図を見た瞬間に手が止まることが多いです。
まずは、基本の回路で電流の大きさがどう変わるのかをしっかり押さえましょう。
そのうえで、抵抗の大きさと電流の大きさの関係を理解していきます。
電流は、回路を見てすぐに式を立てるのではなく、まず電流の流れをたどることが大切です。
電熱線と電流
電熱線では、電流と発熱の関係を整理します。
電流が大きくなると発熱量がどう変わるのか、電熱線の長さや太さによって抵抗がどう変わるのかを理解する必要があります。
最近の問題ではオームの法則が頻出なので、法則の使い方を練習しましょう。
また、電熱線の問題は、表やグラフと一緒に出ることも多いです。
どの条件が変わり、どの条件が同じなのかを整理しましょう。
電流と同じく、電熱線も公式暗記だけでは対応しにくい単元です。
条件を表にまとめて、比例関係を見つける練習が大切です。
光
光の問題では、光がどのように進むのかを図で考えることが大切です。
反射、屈折、鏡、レンズなどでは、光の道筋を正しく描けるかどうかがポイントになります。
レンズの基本3線と呼ばれるレンズによる屈折前後の線を描けるようにしましょう。
光が苦手な子は、図を見ているだけで、実際に光の進み方を自分で描いていないことがあります。
鏡で反射する場合は、入射角と反射角を意識しましょう。
レンズでは、光がどこに集まるのかを図で確認します。
光の単元は、手を動かして図を描くことで理解が深まりやすい分野です。
運動
運動の問題では、速さ、時間、距離の関係に加えて、エネルギーの考え方が出てくることがあります。
特に小6以降では、物体の運動とエネルギーを結びつけて考える問題もあります。
運動が苦手な子は、まず問題の状況を図にすることが大切です。
どこからどこまで動いたのか、どの時点の速さを考えているのか、時間や距離の条件は何かを整理しましょう。
運動は、文章だけで考えると分かりにくい単元です。
図や表に整理し、条件を見える形にしてから解きましょう。
また、最近では慣性の法則に関する問題もよく出題されるので、しっかり確認しておきましょう。
学年別の対策
小4の場合
小4では、物理分野も身近な現象を通して学びます。
磁石、電気、熱、光、てこなど、日常生活と結びつきやすい内容が中心です。
・光の三原色と見える色が決まる理由に関する問題
・豆電球と電流
・モーメント計算
につまづきやすいです。先の学年でも取り返す機会が出てきますが、この時期は、難しい計算よりも、「なぜそうなるのか」を考える習慣をつけることが大切です。
身近な現象を見たときに、理科で習った内容と結びつけて考えるだけでも、物理への抵抗感は減っていきます。
小5の場合
小5は、物理を得意にできるかどうかを左右する重要な学年です。
ばね、てこ、浮力、電流、ふりこなど、入試に直結する単元が本格的に出てきます。
この時期は、よく使われる解き方を身につけることが大切です。
条件整理の仕方、図の描き方、力の矢印の入れ方、比例関係の見方などを、問題演習を通して身につけていきましょう。
わかっている簡単な問題でも必ず図を描くといった制約を課して学習するのがいいかもしれません。
小5で典型パターンを固めておくと、小6で総合問題に取り組むときに大きな差になります。
小6の場合
小6で物理が苦手な場合は、まず原因を整理しましょう。
小6の問題の文章が長すぎるから解けないのか、小5内容の典型パターンが抜けているから解けないのかを見分けることが大切です。
小6の総合問題で手が止まる場合、実は小5のてこ、ばね、浮力、電流などの基本のどれかがあいまいなことがあります。どれか1つでも抜けていると、そこからすべてが進まなくなることも多いです。その場合は、小6の問題だけを解き直すより、小5のデイリーサピックスに戻る方が効果的です。
小6では時間が限られているため、戻る単元を絞ることも大切です。
テストや過去問で何度も失点している単元から優先して復習しましょう。
SAPIX物理よくある質問
- SAPIX理科の物理はなぜ難しく感じるのですか?
- 物理は、説明を聞いて理解することと、自分で解くことの差が大きい分野だからです。
授業では先生が図を描き、条件を整理してくれます。
しかし、家庭学習やテストでは、その作業を自分で行う必要があります。
そのため、授業ではわかったのに、家で解くと手が止まることがあります。
- てこ・ばね・浮力のどこから復習すればよいですか?
- まずは、いちばん基本の図が描ける単元から復習しましょう。
てこなら支点と距離、ばねなら自然長と伸び、浮力なら重力と浮力の矢印です。
公式や解き方に入る前に、図の中で何が起きているのかを整理することが大切です。
- 物理は暗記ではなく思考力の問題ですか?
- 思考力も必要ですが、典型パターンの習得も非常に大切です。
毎回ゼロから考えるのではなく、よく出る解き方の型を身につけておく必要があります。
そのうえで、問題文に合わせて条件を整理し、どの型を使うか判断する力が求められます。
- 小6で物理が苦手な場合、何から戻ればよいですか?
- 小5のデイリーサピックスに戻るのがおすすめです。
特に、てこ、ばね、浮力、電流、水溶液などは、小5内容が入試問題の土台になります。
小6の問題でつまずいている場合でも、原因が小5内容にあることは少なくありません。
- 動画教材は物理の復習に有効ですか?
- はい。物理では、思考の流れを見ることが大切なので、動画教材は有効です。
紙の解説では完成した図や式だけが載っていることが多いですが、動画では、どこに注目し、どの図を描き、どの条件を使うのかを順番に確認できます。
ただし、すべての問題を動画で見ると時間がかかるため、分からなかった問題や、同じ単元で何度も間違える問題に絞って使うとよいでしょう。
木ノ下翔からのアドバイス
SAPIX理科の物理が苦手なとき、まず意識してほしいのは、解説を読んでわかることと、自分で解けることは違うということです。
物理は、図を描き、条件を整理し、どの解法を使うのかを判断する科目です。
授業で理解できたとしても、家庭学習やテストでその手順を再現できなければ、点数にはつながりません。
物理が苦手な子は、いきなり難しい問題に取り組むよりも、典型パターンをくり返し練習することが大切です。
てこならてこ、ばねならばね、浮力なら浮力の基本の型を身につける。
そのうえで、条件が少し変わった問題にも対応できるようにしていきましょう。
小6で物理が苦手な場合でも、必要なら小5内容に戻ってかまいません。
基礎があいまいなまま総合問題を解き続けるより、戻るべき単元に戻って、解き方を身につけ直す方が結果的には近道になることがあります。
物理は、できるようになるまで時間がかかる分野です。
しかし、図を描くこと、条件を整理すること、典型パターンを練習することを積み重ねれば、少しずつ見えるようになります。
焦らず、一つずつ「自分で解ける形」に変えていきましょう。
物理分野の関連動画
物理分野は、図の描き方や条件整理の流れを見ることで理解しやすくなります。 理科の伴走では、SAPIX理科でつまずきやすい物理分野について、次のような解説動画を用意しています。 ・てこ ・ばね ・浮力 ・滑車・輪軸 ・電流 ・電熱線 ・物体の運動
理科の伴走で復習できます
理科の伴走では、SAPIXをはじめとする大手塾教材や中学入試過去問の解説動画を公開しています。
物理分野では、
・てこ
・ばね
・浮力
・電流
・電熱線
・物体の運動
など、つまずきやすい単元の単元別ポイント解説動画を確認できます。
授業で理解しきれなかった内容を復習したい方、問題の解き方や条件整理の流れを確認したい方は、ぜひご活用ください。理科の伴走へはコチラ


